ロゴは、豆電球の中でハスの花が咲くデザイン。ビジネスとは無縁だったお坊さんたちが、新電力の会社「TERA Energy(テラエナジー)」を立ち上げました。電力会社といいつつ、電力供給が一番の目的ではないといいます。その心は――。
カンサイのカイシャ ここがオモロイ!

「タケさん」こと、代表の竹本了悟さん(48)は奈良のお寺の住職だ。小学生時代、いじめられた。何のために生きるのか。問い続け、考え抜いて、出した答えは、「誰かを守るためなら、生きる価値がある」。
防衛大学校、海上自衛隊を経て入学した龍谷大大学院で、救済論を学んだ。カント、ヘーゲル、西田幾多郎、田辺元。そして、親鸞。自力では悟れなかった親鸞がたどり着いたのは、阿弥陀仏が救ってくれるという「他力」の教え。
ウソつけ。俺がいじめられていた時、誰も助けてくれなかったじゃないか。
でも、違う景色も見えてきた。いじめには決して加わらなかった同級生。「君の意見に賛成だ」と言ってくれた先生。自分を信じ、かばい続けてくれた母。
27歳で浄土真宗本願寺派総合研究所の職員になった。当時、自殺者は3万人を超えた。死にたいという人の相談を受けるキリスト教系団体の研修に参加し、その真剣さに感動した。
仏教者として何ができるのか。2010年、NPO法人「京都自死・自殺相談センター」を設立した。そっと、そばにいるから、愛称は「Sotto」。電話で、メールで、リアルで、孤独や絶望に寄り添う。お寺で寝ながら見られる「ごろごろシネマ」や、死にたいと願う人の居場所「Sottoの縁がわ」を始めた。お金さえあれば、もっと色々できるのに――。
そんな時に出会ったのがシュタットベルケと呼ばれる、お金を地域で循環させるドイツの仕組みだ。路線バスが廃止されそうになった村で、村人が電力会社を立ち上げ、こぞって新電力に切り替えた。収益でバス会社を買収し、地域の足を守り続けているという。
これだ、と思った。日本でも電力自由化が始まっていた。先駆けの「みやまスマートエネルギー」(福岡県)に相談に行くと、「ノウハウは全部教えます。皆さんにはお寺のつながりもある。理想の仕組みを作って」と背中を押された。
4人の僧侶が集まり、18年に起業した。最大の特徴は「応援するでんき」という仕組みで、支払われた料金の最大2.5%を寄付に回す。その分、会社の利幅は減るけれど。寄付先は、利用者が全国170の非営利団体などから選べる。
電力の調達方針は「仏教思想をベースにした、気持ちよく使える電気」。再生可能エネルギー主体で、戦争の火種になる化石燃料や原子力は使わない。住民の反対運動を受けるメガソーラーからも仕入れない。今では1931の個人・法人が契約し、累積の寄付総額は5600万円を超えた。向こう10年間で、20億円規模のファンドも作りたいと願う。
「電力供給はあくまで手段。私たちは、人々の心をつなぐインフラであり続けたい」と竹本さん。お金の使い方をほんの少し変えるだけで、社会は大きく変えられる。それが信念だ。
会社メモ
テラエナジー 従業員は16人。年商は約20億円。電力プランは「固定単価プラン」と、日本卸電力取引所の価格に連動して料金が変わる「市場連動プラン」の二つ。市場の動向を見ながら電力消費を調節できる場合は、後者がお得。公式サイトでは、大手電力会社と比較して料金をシミュレーションできる。
ひとこと
テラエナジーを利用する「世界一明るい視覚障害者」の成澤俊輔さん(41) 寄付っていくら払えばいいんだろうって悩みますよね。でも、電力を使うだけで自動的に、そして1回ぽっきりでなく毎月寄付できる仕組みは手軽で、ほどよい距離感が気に入ってます。








